転職ノウハウ
長野県 製造業における機械設計用ソフトウェア導入シェア
長野県におけるCAD導入の現状
長野県の製造業(全業種)では、近年機械設計用ソフトウェア(CAD等)の導入が加速しています。特に3次元CADへの移行が進んでおり、設計現場では2次元CADから3次元CADへのシフトが重要事項となっています。
全国的に見ても、2D CADの代表格「AutoCAD」が依然として広く使われておりトップシェアを占めますが、3D CADでは「SOLIDWORKS」が約40%という圧倒的な市場シェアを持ち、機械設計分野で最も利用されている状況です。
長野県内の企業もこの傾向に沿っており、ここ数年で新規導入されたCADの多くはSOLIDWORKSをはじめとする3D CADが占めています。
主要CADソフトの導入状況
AutoCAD(2次元CAD)
機械図面の作成や既存図面の管理において、依然として多くの企業で使われています。AutoCADは汎用CADの中でもトップクラスの普及率を誇り、建築・土木から機械分野まで日本で広く使用されている標準的ツールです。
長野県の中小企業でも図面作成の中心として活用されており、特にベテラン技術者のいる企業では2D CADとして根強い利用があります。なお、Autodesk社は近年ライセンス形態をサブスクリプション(ネームドユーザー)方式に一本化しており、従来の永続ライセンスからの切り替えやライセンス管理の見直しが、県内企業でも更新時の検討テーマになっています。
また、3D化の流れに伴いAutoCADから派生したInventor(オートデスク社の3D CAD)への移行や、後述するクラウド型のAutodesk Fusionを併用する動きも一部で見られます。
SOLIDWORKS(3次元CAD)
長野県で導入数が最も伸びている3D CADソフトです。
SOLIDWORKSは日本の3D CAD市場でシェア約40%を占めるトップソフトで、使いやすいインターフェースと豊富な機能により全国で圧倒的ユーザー数を獲得しています。長野県内でも、精密機器や産業機械メーカーを中心にSOLIDWORKSの採用が急増しました。
大手CAD販売代理店の調査でも「SOLIDWORKSがユーザーに選ばれる割合は実に40%以上」と報告されており、県内企業の導入実績数でもトップクラスです。実際、県内にはSOLIDWORKSやPTC Creo(後述)など業界トップシェアCADの正規代理店が存在し、導入支援体制も整っています。過去数年間(2022~2026年)で見ても、新規導入された機械系CADの中でSOLIDWORKSが占める割合は最大であり、特に中小製造業の3D設計ツールの標準になりつつあります。
なお開発元のダッソー・システムズは近年、クラウドプラットフォーム「3DEXPERIENCE」と連携した「3DEXPERIENCE Works」への移行を推進しており、デスクトップ版SOLIDWORKSからクラウド連携型へのアップグレードや、PDM機能を含めた統合環境の採用が新しい導入形態として増えています(後述の長野オートメーションの事例もこの形態です)。
その他主要3D CAD
特定の業界や顧客ニーズに応じて、他の3D CADソフトも導入されています。例えばPTC社の「Creo Parametric」(旧Pro/E)、ダッソー社の高機能CADである「CATIA」、シーメンス社の「NX」などです。これらは主に自動車・航空機など大手メーカー系列の部品サプライヤーや、大規模アセンブリ設計を行う企業で採用されています。
実際、大企業で人気の3D CADとしてはCreoやCATIA、NXなども名前が挙がっており、長野県内でも自動車部品製造や精密機械分野の一部企業が導入しています。
また、AutoCADユーザー企業が3D化する際にAutodesk社の「Inventor」を選定するケースも見られ、使い慣れた2Dとの親和性から導入する例があります。これらSOLIDWORKS以外のCADが県内新規導入の残りシェアを占めており、業種や取引先の要件によって使い分けられている状況です。
クラウド型CAD(Fusion・Onshape など)
ここ数年で存在感を増しているのが、クラウドを前提とした3D CADです。Autodesk社の「Fusion」(旧Fusion 360)は、CAD/CAM/CAE/基板設計までを一つに統合した低コストのクラウド型ツールとして、スタートアップや小規模製造業、試作・治具設計の用途で導入が広がっています。PTC社のフルクラウドCAD「Onshape」も、インストール不要でブラウザから複数拠点・複数人が同時編集できる特性から、リモートワークや拠点間連携を重視する企業で採用例が出てきています。
買い切り型の高額なCADを導入しづらかった小規模事業者にとって、月額・年額課金で始められるクラウドCADは3D化の入り口となっており、長野県内でも金属加工業や試作業を中心に利用が広がりつつあります。教育機関や個人向けの無償・低価格プランが人材育成の裾野を広げている点も、今後の普及を後押しする要素です。
国産CADや低コストCAD
一部では国産の機械系CADソフトも導入されています。
例えば、富士通の「iCAD」シリーズ(装置・生産設備など大型機械向け3D CAD)や、2D汎用の「Jw_cad」(無償ソフト)などです。ただし、導入実績数としては限定的で、多くは特定用途や既存資産との兼ね合いで使われているに留まります。
またAutoCAD互換のIJCADやBricsCADなどコスト重視のCADも若干数導入例がありますが、主流ではありません。AutoCADのサブスクリプション費用の上昇を背景に、2D用途に限ってこれら互換CADへ切り替えるコスト最適化の動きは全国的に見られるものの、全体として、長野県の製造現場では上記大手メーカーのCADソフトが中心となっています。
利用動向と業界別傾向
長野県の製造業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の一環としてCAD活用が年々深化しています。特に3D CADデータの有効活用が重視されるようになり、設計から製造・品質管理まで一貫したデジタル連携を図る動きが活発です。
全国調査になりますが、設計部門の半数以上が既に3D CADを活用しており、逆に「2D図面だけで十分」として3D化に消極的な企業も約1~2割存在する状況です。長野県内も同様に、先進的な企業は3D設計へ移行を完了させていますが、一部の中小企業では図面文化やコスト面から2D CADを併用するケースが残ります。
業界別に見ると、精密機器・産業用機械分野の企業が3D CAD導入をリードしています。これらの業種では製品開発サイクルの短縮や試作コスト削減のため3D化のメリットが大きく、SOLIDWORKSなどによる設計効率化が顕著です。
一方、自動車関連部品メーカーでは、完成車メーカーからのデータ連携要請に応じてCATIAやNXといった顧客と互換性のあるCADを導入する傾向があります。また、金型・木型製造業が集積する長野県ならではの特徴として、この分野で他県よりも早くCAD/CAM導入が進み、3次元化率が高い点が挙げられます。
鋳造用の木型製作では1990年代から長野県内先駆者が3D CAD/CAMを活用し、現在では木型職人の業界全体でコンピュータ導入が進むという好循環が生まれています。このように、長野県内の製造業各社は自社の属する業界特性に合わせて最適なCADを選択し、導入効果を上げています。
さらに、ここ数年では国や県の補助金(IT導入補助金、ものづくり補助金等)を活用してCADを最新バージョンへ更新したり、新規導入する中小企業も増加しました。IT導入補助金は2025年・2026年も継続して公募されており、CADやPDMといった設計系ツールの導入・クラウド利用料も対象となるため、県内中小企業のCAD投資を引き続き後押ししています。
例えば、クラウド型CADやPDM(製品データ管理)システムとの連携強化もトレンドです。設計データの一元管理や社内外での共有を目的に、PLM/PDM導入によるCADデータ活用高度化に乗り出す企業も現れています。
長野県長野市に拠点を置く長野日本無線では、電子機器開発での設計データ管理を改善するため図研社のPDMシステム「DS-CR」を新たに導入しました。これにより電気CADと機械設計データを連携し、部品表の自動生成や設計資産の共有を実現して、設計工程全体の効率化・標準化を図る計画です。このように、単なるCAD導入に留まらず設計プロセス全体のDXを推進する動きが県内でも見られます。
最新トレンド:AI活用とデータ連携の広がり(2025~2026年)
直近の大きな変化として、CADへのAI機能の統合が挙げられます。Autodesk、ダッソー・システムズ、PTC、シーメンスといった主要ベンダー各社は、生成AIを活用した作図支援や設計レビュー支援、過去の設計資産の検索・再利用支援などの機能開発を競っており、順次製品へ搭載が進んでいます。荷重や材料などの条件から最適形状をコンピュータが導き出すジェネレーティブデザイン(生成的設計)も、Fusion・Creo・NXなどで実用段階に入っており、軽量化部品や治具設計での活用例が増えています。
また、3Dプリンター(金属・樹脂)の普及に伴い、CADデータをそのまま試作・小ロット生産へつなげるワークフローが定着しつつあります。CAD→CAE(解析)→CAM(加工)→検査までのデータ一貫活用や、図面レス化(3D単独図・MBD:モデルベース定義)への取り組みは、取引先の要請とも相まって、県内サプライヤーにとっても今後避けて通れないテーマになりつつあります。
人材面では、3D CADスキルを持つ設計者・CADオペレーターの需要が全国的に高止まりしており、長野県内でも機械設計職の求人は堅調です。SOLIDWORKSやiCAD、CATIAなど具体的なCAD経験を要件とする求人が多く、CADスキルの習得が県内製造業への就職・転職において引き続き有力な武器となっています。
長野県内における導入事例
長野県内の企業でCAD導入に成功している事例として、以下が挙げられます。(インターネットで事例として公開されている実例)
長野オートメーション株式会社(上田市)
産業機械の設計製作を手がける中堅企業。1980年代から機械設計にCADを活用し、近年は数十名の設計者体制に拡大。2022年には従来の2D中心設計から「3DEXPERIENCE SOLIDWORKS」プラットフォームを導入し本格的な3D設計へ転換しました。
その結果、生産設備設計における設計変更の迅速化や工程間の情報共有が飛躍的に改善され、生産ラインのカスタマイズと最適化に成功したと報告されています。同社は経済産業省の「地域未来牽引企業」にも選定されており、3D CAD活用による競争力強化の好例となっています。
有限会社エヌ・ケー木型工房(上田市)
鋳造用木型製作の老舗。1990年代半ばにいち早く3次元対応のCAD/CAM「Space-E」(NTTデータエンジニアリングシステムズ製。同社の製造ソリューション事業は2025年に分社化され、現在は株式会社NDESが提供)とマシニングセンタを導入し、手作業中心だった木型製造のデジタル化を実現しました。同社は県内の同業他社にもコンピュータ導入を働きかけ、地域全体でのCAD/CAM普及に寄与しています。
現在では長野県の木型業界全体でCAD/CAM導入率が他県より高く、複雑形状の木型加工で優位に立っています。伝統産業におけるDX推進の成功事例と言われています。
長野日本無線株式会社(長野市)
無線通信機器や電子部品のメーカー。前述の通り、2023年に設計データ管理システム(図研「DS-CR」)を導入し、機械設計データと電気CADデータを統合管理する仕組みを構築しました。
従来は部門ごとにCADデータが分散して非効率だったものを、CAD/PLMを連携させたエンジニアリングチェーン管理の強化により解決しています。今後は機械設計部門とのデータ連携も進め、製品品質向上と設計リードタイム短縮を目指す計画です。この事例からは、CAD導入効果を最大化するには周辺システムとの連携が重要であることが分かります。
まとめ
長野県内では企業規模や業種に応じて様々なCADソフトが導入されてきました。過去数年間(2022~2026年)で見ると、特に3D CADの新規導入が顕著であり、中でもSOLIDWORKSが導入実績数でトップシェアとなっています。弊社で取り扱っている求人についても同様の傾向です。
また、それぞれの企業が自社の課題(設計効率化、生産性向上、DX推進など)に合わせてCAD活用法を工夫しており、導入後の運用改善や他システムとの連携にも取り組んでいる点が特徴です。近年はクラウドCADやAI機能、PDM/PLM連携といった新しい選択肢も加わり、CAD導入は「どのソフトを買うか」から「設計プロセス全体をどうデジタル化するか」へとテーマが広がっています。長野県は精密機械産業が盛んな地域だけに、今後も最新CAD技術の導入・活用による競争力強化が続くことが期待されています。
参考資料(References)
- MONOist「どのCADを使っている?3D推進の状況は?ちょっと気になる隣のCAD事情」(2022年12月1日)
- CAD総研「CAD業界シェアと選び方」
- キャディット・プロジェクト(岡谷市)会社紹介ページ
- NTTデータエンジニアリングシステムズ(現・株式会社NDES)事例紹介「Space-Eと工作機械があれば複雑な砂型に対応できる」
- リコー長野支社 DX事例紹介(製造業)
- PR TIMESニュース「長野日本無線、図研のDS-CR導入」
- SOLIDWORKS公式ブログ「長野オートメーション事例」(2022年11月4日)
※本記事のシェア・製品情報は各調査・各社発表時点のもので、2026年7月時点の公開情報に基づき更新しています。最新の製品仕様・ライセンス形態は各ベンダーの公式情報をご確認ください。
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